@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00000496, author = {加藤, 一郎 and Kato, Ichiro}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報}, month = {Mar}, note = {本研究はバッハ復興の機運が高まりつつあった19世紀初頭にポーランドで生まれ、フランスで活動したピアノの巨匠フレデリック・ショパン(1810~1849)が、どのようにバッハを受容していたかを、彼の弟子ポーリーヌ・カザレンの楽譜に記されたショパンの書き込みを基に考察したものである。全ての調による《24の前奏曲》作品28を書いたショパンの音楽は、様々な要素とレベルにおいて、バッハの音楽から大きな影響を受けていたと言われている。しかし、これまでショパンがバッハをどのように受容していたかを示す具体的な資料が明らかにされて来なかった為に、この分野の研究は類推的な段階に留まっていた。そうした中で、カザレンが用いていたバッハ《平均律クラヴィーア曲集》全2巻の楽譜が見つかり、そのうち、ショパンの手による書き込みが記されている第1巻の楽譜が2010年にパリ音楽学協会から複写版の形で刊行された(J.S.Bach.Vingt-Quatre Preludes et Fugues (Le Clavier bien tempere. Livre I) Annote par Frederic Chopin.Commentaire de Jean-Jacques Eigeldinger. Paris: Societe Française de Musicologie.2010.)。本研究では、この楽譜に記されたショパンの書き込みを詳細に検討することによって、次のような知見を得ることができた。先ず、ショパンはカザレンの楽譜の第1番のプレリュードから第7番のプレリュードに亘って、当時、パリのヴェーヴェ・ロネール社から刊行されていたチェルニー版の注釈を、ほぼ完全な形で転記していた。これは、ショパンがチェルニーの校訂に一定の理解を示していたことと共に、この楽譜の教育的な価値を試そうとしていたことが推測される。ショパン独自の書き込みについては、テキストの修正、フーガにおける分析的な注釈、演奏に関する注釈に大別される。テキストの修正は本研究で最も重要なものであり、そこにはショパン独特な音響感覚が示されていた。彼は多くの個所でバッハが用いた自然的短音階を和声的短音階に修正しており、そこに含まれる半音進行と増2度進行は独特な歪な響きを作り出していた。また、テキストの修正には不協和音程の回避、拍毎に調が変化する調性の流動性、理論的な正当性に基づく音の修正、そして、3度の二重トリルといった彼独自のピアノ奏法を示すものも含まれていた。フーガにおける分析的な注釈は、フーガのテーマの開始部分と終了部分にテーマの形に応じて印を振るものであり、これはケルビーニの『対位法とフーガ講座』にも用いられている方法であった。演奏に関する注釈には彼独特な同じ指の連続使用を含む運指法や左右の手の取り分け、オルゲルプンクト等の重要な音に注意を向ける指示、更に、スティル・ブリゼといったフランス・バロックに由来する古典的な装飾技法等が含まれていた。本稿で得られた新たな示唆によって、ショパン理解が進展し、ショパン演奏に活かされることを願う次第である。, 4, KJ00009244696, 研究ノート}, pages = {41--56}, title = {F.F.ショパンによるJ.S.バッハの受容に関する研究 : ポーリーヌ・カザレンの楽譜へのショパンの書き込みの分析を通して}, volume = {26}, year = {2014}, yomi = {カトウ, イチロウ} }