@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00000491, author = {長井, 進之介 and Nagai, Shinnosuke}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報}, month = {Mar}, note = {本論文は、F.リスト(1811-1886)がJ.W.v.ゲーテ(1749-1832)の小説『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代 Wilhelm Meisters Lehrjahre』の中の一篇である「あの国をご存知ですか? Kennst du das Land?」に作曲した≪ミニョンの歌 Mignons Lied S275/R592≫の分析を通して、リストのテクスト解釈を考察することを目的とする。 ≪ミニョンの歌≫は、1842年に第1稿が作曲されてから、リストの歌曲創作のほぼ全ての時期に亘って3回の改訂と2回の編曲が行われた。改訂の多さは、リストの創作全般においてきわめて特徴的だが、特に歌曲におけるそれは、歌唱旋律における韻律の処理やピアノパートの表現の変化など、作曲者のテクスト解釈の変遷が明快に反映されるため、器楽作品以上に改訂の目的を推定することが出来るはずである。 「Kennst du das Land?」を検討すると、多義的な意味が内包されていることが分かった。憧れの対象や目的地が、`あの国'をはじめとした様々な形で表現され、`あなた'に対する呼称も`私の愛しい人'、`私の保護者'、`(私の)お父様'と文脈に応じて変化することは、テクストに重層的意味があることの証であろう。個々の語句が持つ多義性を踏まえた上で「均衡強音」による意味の広がりに着目すると、ミニョンの出生の秘密やヴィルヘルムに対する感情の揺らぎ、`あの国'が指す場所といったものを読み取ることができる。 《ミニョンの歌》は、これまで第1稿を念頭に置いて比較考察されることがなかった。恐らく、第2、3稿がP.ラーベが編纂の旧全集に収録されたのに対し、第1稿はシュレージンガー社による1843年の初版しかないためだと考えられる。筆者がリストと同時代の不明のコピストによる筆写譜を入手し、ドイツ語歌曲版の三つの稿の比較考察を行った結果、大きく二つの特徴を見出すことができた。第一に、テクストの各節第5行にほとんど変化を与えなかった点である。この楽節の扱いからは、第1節、第2節の有節的な作曲と相まって、音楽に有機的な統一感を持たせようとした意図が窺える。第二に、テクスト各稿における第3節への作曲の仕方が大きく変遷していく点である。第3節における音楽上の大きな変化によって《ミニョンの歌》は通作歌曲としての性質を強く示す。第1稿における上昇への強い希求の表現は、改訂を重ねることで穏やかな表情に変化し、最終的には動きを極力排した和声的書法となった。 リストは、`あなた'の強調や呼称の変化を音楽に反映させると共に、`そこへ'という、方向性を指す言葉を徹底的に上行させることで、ミニョンの抱く憧れや祈りを描写しようとしたと考えられる。この手法は改訂によって変化し、第1稿及び第2稿では、恋愛感情という主観的な視点、第3稿では、さらに高い存在を意識した、諦観的な視点を読み取って作曲しようとしたことが見えてきた。リストにとっての「ミニョン」は、憧れと夢想の中にありながらも、強い意志と高い視点をもった女性であり、彼は改訂の中で、ミニョンの一人間としての姿よりも、普遍的なものの描写へと移っていったのであろう。, 7, KJ00008398805}, pages = {93--108}, title = {F.リスト《ミニョンの歌》分析と解釈 : 改訂を通したミニョン像の変遷について}, volume = {25}, year = {2013}, yomi = {ナガイ, シンノスケ} }