@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002616, author = {岸本, 哲弥 and Kishimoto, Tetsuya}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {本論はフランツ・リスト Franz Liszt(1811-1886)の《コンソレーション》第2稿 LW-A111b/SH172 第1番の分析を通して、晩年作品の和声語法の解明の手掛かりと成り得る「限定進行音の自由な進行」と「無解決倚和音」という2つの和声語法について論じるものである。 まず本論前半では、島岡譲(1926-2021)の和声理論を用いて、詳細な和声分析を行い「力性グラフ」及び「分割譜」を示すことによって、楽曲の細部から全体構造までの様々なレベルの和声構造の解明を図った。これによって大きく4つの和声語法の特徴が見られた。1つ目は、楽曲全体を通して明確なT機能を避ける傾向である。本楽曲中では「完全に安定・自足した低音位」(島岡 1998, 416)であるI基本位置は一部にしか示されず、「中間的な安定性」(同前, 416)を示すI¹が多くを占めている。2つ目は、再現部冒頭に置かれた主調E-DurのI²が、Vへと解決することがなくT機能へと進行することである(「無解決倚和音」)。そして3つ目は、D進行とS進行の両方が内在した両義的な機能を持つ和声進行が見られることである。最後に、限定進行音の自由な進行が見られることである。これも前述した両義的な機能を生じさせる所以の1つと言える。 また本論後半では、「限定進行音の自由な進行」と「無解決倚和音」について論じていく。前者は、限定進行が必要な「付加構成音」が「和音構成音化」し(島岡 1998, 448)、限定進行という制約がなくなったことの表れと言えるだろう。また、後者は、Vに対する倚和音として、後続のVと共にD機能を成すI²が、Vへと解決しないままT機能へと進行することを指す言葉である。この「無解決倚和音」I²は、Vへと解決されなくてもVに向けての「緊張と指向性」(島岡 1998, 448)を持っていることから、I²単独でD機能を示す和音と言える。このI²という「無解決倚和音」をリストが第2稿に用いたことは、和声語法の差異が見られる《コンソレーション》初稿との比較に鑑みても意図的であったと考えられる。 両者は一見関連のないことのようであるが、どちらも「緊張と指向性」を持つものである。限定進行音の自由な進行によって生じる「和音構成音化」は、後続和音との連結において「付加構成音」の限定進行という制約がなくなり、その「緊張と指向性」は解消又は持続したままとなる。また「無解決倚和音」として生じるI²は、Vへと解決されなくてもVへの「緊張と指向性」を維持した和音であるため、解決されなくても次の和音が想像できるのである。 リストの晩年作品ではI²の独立した使用、さらに明確なT機能を避ける傾向にある。しかし本論を通して、これらはリストの中期にあたるヴァイマール時代に既に見られていたと考えられる。リストは後年、和声において完全な安定性の明示を避けることを推し進めていったと言えるだろう。}, pages = {187--202}, title = {《コンソレーション Consolations》第2稿 LW-A111b/SH172 第1番における「限定進行音の自由な進行」と「無解決倚和音」}, volume = {35}, year = {2023}, yomi = {キシモト, テツヤ} }