@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002613, author = {松村, 麻由 and Matsumura, Mayu}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {本稿では、『アナと雪の女王』(原題Frozen, 2013年公開)と、『アナと雪の女王II』(原題Frozen II, 2019年公開)の物語、視覚的・聴覚的な要素を比較し、文化を流用する側とされる側との新しい関係性を築く考察材料とすることを目的としている。ディズニー・アニメーションでは欧米以外の場所や民族的なマイノリティをエキゾティックな要素として取り入れている作品がしばしばあり、世界的な人気を博したものも少なくない。そうした場所や人々に対するディズニーの描き方には従来から批判がなかったわけではないが、時代と共に人々の人種やジェンダーに関する意識に変化がもたらされたことと呼応するように、近年さらにディズニーに対する批判が目立つようになってきた。実際に、『アナと雪の女王』では、北欧の先住民族のサーミを思わせる要素が視覚的・聴覚的な面から複数確認できるが、ディズニーは公式にサーミをモデルにしたとは言っていない。そのため、サーミ自身からも批判の声があがった。しかし、『アナと雪の女王II』では、サーミからの批判があったことをきっかけに、ディズニー側からの呼びかけに応じてサーミが制作プロセスに積極的に関わったことで、サーミたちとの関係性が1作品目と2作品目では大きく変化していた。 視覚的な要素については、『アナと雪の女王』ではサーミのステレオタイプ的な要素を流用した形になっていたが、『アナと雪の女王II』ではサーミの歴史的史実を物語の中心に置き、伝統工芸品などの文化が反映された。聴覚的な要素については、両作品でサーミの伝統歌唱ヨイクJoikからインスピレーションを受けた作品、《Vuelie》が歌われていたが、『アナと雪の女王』ではサーミとは関係のないシチュエーションでのみ使用されていた。しかし、『アナと雪の女王II』ではサーミをモデルにしたノーサルドラの民が《Vuelie》を歌ったことで、サーミとの結びつきが前面に押し出されていた。また、この映画ではヨイク以外にも北欧の音の要素が使われていることが確認できた。クルニンKulningは1作品目ではエキゾティックな要素として使われていたが、IIでは本来の文脈に沿った形で使用されていた。角笛についてはいずれもエキゾティックな要素として、そして場面転換の要素として音響的に用いられており、いわゆる「北欧的」な要素はヨイクやクルニンほど追求されているわけではなかった。 このような変化から、ディズニーは視覚的な面以外に、音響面でも倫理観や道徳観を意識しながら制作するようになった姿勢が読み取れる。『アナと雪の女王II』は、サーミへの理解や同意を得て、サーミ側とディズニーの双方が納得できる形で映画が制作されている。そのため、『アナと雪の女王II』では従来のエキゾティシズムとは異なり、単なるエキゾティックな要素や文化を商業的に流用することからは離脱しようとする姿勢が確認できた。}, pages = {137--153}, title = {『アナと雪の女王』における「サーミ的なもの」をめぐって : ディズニー・アニメーションにおけるエキゾティシズムと音楽}, volume = {35}, year = {2023}, yomi = {マツムラ, マユ} }