@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002606, author = {今野, 哲也 and Konno, Tetsuya}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {本研究は《5つのヴェネツィアの歌》Op.58を対象に、フォーレの和声技法を精査しながら、「和声構造」(調の配列に基づく楽曲全体の構成方法)の構築手法の含意を探り、ヴェルレーヌの原詩との蓋然性を読み解くものである。本稿の第3曲〈グリーン〉の考察を以て、一連の研究を締め括る。 〈グリーン〉の特徴に、(1)「半減7の和音」を仲介とする転義、(2)「属7の和音」と「ドイツの6」との異名同音的転義(裏コード)、(3)リディアの色彩、(4)動機労作(「グリーンの動機」)などがある。これらの個々の技法も肝要だが、本研究が最も重視する点は「和声構造」である。〈グリーン〉は上記の歌曲にも増して調の揺れ幅が大きいため、第3曲を読み解く鍵も、他の4つの歌曲と同様に、「和声構造」の構築手法にある。 本稿は、歌詞と音楽の在り方から、第3曲を【A1】第1節の歌詞(第1~10小節:Ges-dur→Des・・・Des→Ges)、【B1】第2節(第10~22小節:H→D→C→Fis・・・Ces→Fes→Ges)、【A2】第3節(第1~2行:第23~27小節:Ges→Des・・・Ges→Des)、【B2】第3節(第3~4行:第27~37小節:A→E→D…Ges→Des→Ges)に区分する。重視すべき点は、二度のシャープ系の調への転換/フラット系の調への回帰である。第一のシャープ系部分は、【B1】[c1](第10~12小節)と[c2](第13~15小節)で、〓を特徴とする音型(グリーンの動機)が展開される。この部分では、語り手の「私」が、「あなた」に出会う胸の高鳴りが表現されると解釈する。また、第二のシャープ系部分は【B2】[e](第27~28小節)だが、ここでも「私」の内面が歌われる。 【B1】[d][c3][c4](第16~22小節)の第2節の歌詞「休息させる」「夢見る」は、【B2】[c5][c6](第29~34小節)の第3節「あなたが休息するなら私も眠る」に連動する表現と考える。‘reposée’や‘reposz’には「休息」だけでなく、「墓地に眠る」などの含意もあるため、登場人物の「私」と「あなた」の喜びも、何らかの形で「死」に連関していると解釈し得る。 歌曲集では、主調Ges-durの第3曲〈グリーン〉から、第4曲〈クリメーヌに〉で主調e-mollとなり、第5曲〈それは恍惚なこと〉でDes-durに転ずる。この図式を仮に[Ges―♯系―Des]とする。〈グリーン〉の第一/第二シャープ系部分とその前後にも、同じ図式が見出されると考え得る。なお、第5曲にもシャープ系部分(第16~22小節)が見出されるが、ここには「グリーンの動機」が引用される。〈グリーン〉では、場所や時間に加え、「私」と「あなた」が何者であるかも不明である。しかし、彼らが「死」と結び付き得るのであれば、生ある「人間」である必要もないし、何かの象徴の可能性もある。こうした意味深長な原詩を、フォーレの音楽が巧妙に表現している。その意味でフォーレは、〈グリーン〉をたんなる「明るい愛の歌」と捉えていなかったと解釈する。}, pages = {17--33}, title = {G.フォーレの歌曲創作における「和声構造」の構築手法 5 : 〈グリーン〉作品58-3を対象として}, volume = {35}, year = {2023}, yomi = {コンノ, テツヤ} }