@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002398, author = {加藤, 一郎 and Kato, Ichiro}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {本研究は、フレデリック・ショパンの最も優れた門弟の一人であったカミーユ・デュボワ=オメアラ Camille Dubois (née O’Meara)(1828~1907年)の楽譜に残された書き込みの内、線状の書き込みに焦点を絞り、その内容について考察したものである。この楽譜に残された線状の書き込みは155件あり、その内容の特徴は主に下記の7点からなっている。 1.構造およびフレージングの明瞭化。構造およびフレージングの明瞭化については、重要な音楽構造の境界、挿入句から主部に戻るところ、和声的フレーズの境界等に線を引くことによってそれらを明瞭にし、演奏者の意識を喚起するものであった。 2.音と音の間の表現。音と音の「間」の表現に関しては多様な意味を持っていることが明らかになった。それは、オペラ歌手の実践的なブレスをピアノの表現技法に取り入れたり、小節の初めに基本的な和声が示された後、僅かに緊張感を落としてテンポを僅かに拡大する奏法、和声の解決音を重視し、その後のパセージとの間に僅かな時間を与える方法、フレーズの中で緊張を有する音の前で僅かに時間をとって、その音の緊張感を充分に与える方法等が示されていた。 3.リズムの活性化。ショパンは休符に線をひくことがしばしばあり、それはリズムの活性化を意図したものと考えられる。 4.装飾音を弾くタイミング。装飾音を弾くタイミングに関するショパンの指示は、装飾音をバスと同時に弾き始めることを示唆していた。それは、高音域に亘る前打音においても、和音による前打音においても同様であった。ショパンの前打音はしばしば和音やトリル、アルペッジョと結びついているが、今回の調査では、ショパンは全ての前打音をバスと同時に弾くことを示していた。 5.音価をきっぱりと断ち切る表現。ショパンは縦の線によって、音をきっぱりと断ち切る方法も示しており、これは、現在のショパン受容において充分に理解されていない面である。 6.グラフィカルな線状の書き込み。線によるグラフィカルな書き込みは具体性に乏しく、今後の検討が必要である。 7.様々な書き込みの併用。ショパンは様々な内容の書き込みを一つのフレーズの中で行っていたが、演奏者はそれを上手く汲み取り、彼の音楽様式を全体的に理解することが重要である。 ショパンの線状による書き込みは楽譜に印刷されない情報であるが、それらはショパンの音楽的真意に基づいていることは確かである。装飾を常にバスと同時に弾き始めること等からはバロック期および前古典派の音楽からの影響が見られた。 世界のショパン演奏は、本研究で扱ったショパンの書き込みの意図を殆ど理解していないのが現状である。従って、今後は本研究の研究成果がショパンの音楽の本質的理解に寄与することができれば幸いである。}, pages = {1--17}, title = {弟子の楽譜への線状の書き込みから見たショパンの演奏様式 : カミーユ・デュボワ=オメアラの楽譜の調査を通して}, volume = {33}, year = {2021}, yomi = {カトウ, イチロウ} }