@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002214, author = {加畑, 奈美 and Kabata, Nami}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {本論は、ベートーヴェン Ludwig van Beethoven(1770〜1827)作曲のピアノ・ソナタOp. 106のテクストの異なる二つの原版のうち、イギリス原版とその重要性について考察したものである。 Op. 106は、テクストの異なる二つの原版が、ウィーンとロンドンでほぼ同時期に出版された。自筆譜が不在な上、両原版のテクストには相違が多く、テクストの決定については多くの音楽家たちを悩ませてきた。ウィーン原版は、当地に居たベートーヴェンが出版に携わることができ、楽譜にもかなりあとまで目を通していたと考えられる。しかし、ほぼ同時期に出版されたイギリス原版については、全幅の信頼を置くリースに全てを委ね、彼が適切だと思う箇所で、内容を変更したと考えられる。 自筆譜が消失している現在、楽譜作成にあたって、作曲者自身がかなりあとまで目を通していたと推定されるウィーン原版を出発点とするのはごく自然である。しかし、筆者が以前に複数のエディションを比較した際には、イギリス原版に由来すると考えうる箇所が少なくなかった。特に、Op. 106を、実演を通じて広めるのに大きく貢献したフランツ・リストFranz Liszt(1811〜1886)やハンス・フォン・ビュローHans von Bülow(1830〜1894)の校訂した楽譜には、それが顕著であった。この点から、当時のOp. 106の演奏はイギリス原版の内容を受け継ぐものであり、演奏によって認知されてきた作品像には、紛れもなくイギリス原版の大きな影響があったことが分かる。したがって、Op. 106の現代の作品像を検討するにあたっても、イギリス原版の影響を精査することが不可欠であろう。 第1節では、先行研究や現在の楽譜出版について整理し、イギリス原版の位置を明らかにした。第2節では、イギリス原版系統の楽譜の出版状況を述べ、イギリス原版の影響についてまとめた。第3・4節では、イギリス原版系統に属すると考えられるリスト版と、その弟子ビュローの批判校訂版、またそれらが後世に与えた影響を考察した。第5節では、二つの原版とリスト版・ビュロー版を比較検討することで、リストとビュローの批判校訂版には、イギリス原版の影響が強く反映されていること、イギリス原版がこの二人の大ピアニストによるエディションや演奏によって後世に大きな影響力をもたらしていたことを明らかにした。 本論で明らかにしたイギリス原版の影響を、さらに多方面から検討すれば、それが作品像に本質的に関わるものであることが明らかになるだろう。イギリス原版を今一度再考することは、2019年刊のベーレンライター版の序文にもある「・・作曲されてから200年が経つ今も、依然として演奏者にとっても聴衆にとっても等しく猛烈な挑戦を迫ってくる」Op. 106を紐解く上で、重要な鍵となろう。}, pages = {209--224}, title = {ベートーヴェンのピアノ・ソナタOp. 106のイギリス原版とその重要性について : そのリスト版、ビュロー版への影響の検討を通して}, volume = {32}, year = {2020}, yomi = {カバタ, ナミ} }