@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002211, author = {鶴岡, 翔太 and Tsuruoka, Shota}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {人はその瞬間に鳴り響く音や音楽の進行に意識を向けつつ、音楽が醸し出す雰囲気を感じ取ったり、音楽の展開に伴う自らの感情の変化を味わったりしながら音楽を聴いている。鑑賞の授業においても、生徒は音楽の特徴や構造を捉えるとともに、音・音楽を何かしら受け止めたり、心の動きを抱いたりしながら音楽を聴いている。そして、学習の過程で聴く経験を重ねるなかで、初発の受け止めや抱いた心の動きを変化させながら聴き深めていく。 パトリック・ジュスリン Patrik N. Juslinは、人の進化の過程で順次出現したと考えられる7つの脳機能に基づき、音楽による感情喚起のメカニズムについての包括的な理論を示している。本稿では、ジュスリンの理論を検討することによって、音楽が喚起する感情の諸相を精査するとともに、音や音楽とそれらによって喚起される感情との関連について考察した。 ジュスリンの理論の意義は、音楽が感情を喚起する際に働くメカニズムの分類を試みた点である。分類されたメカニズムはそれぞれが個別に独立していることを意味するのではない。むしろ、メカニズムには動的に相互作用するネットワークが存在することを示唆している。ジュスリンは、音楽と感情を一対一の関係でみるのではなく、包括的に捉え、音楽によって喚起される感情が単一の現象ではないことを強調している。 音楽そのもの、それを聴く聴き手の状況、そして音楽と聴き手の関係は画一的なものではない。そのため、同じ音楽であっても聴き手が働かせたメカニズムによって、結果として生じる感情が異なる。また、その時々の状況によって異なったメカニズムがアクティブになり、その都度いくつかのメカニズムによって動的に相互作用するネットワークが形成される。授業を想定すると、音楽によって喚起された感情と音楽の構造などとが関連付けられる場面が予想されるが、それは「喚起された感情」の一部分であって、それだけで音楽と「喚起された感情」との関わりのすべてを捉えることは到底できないということになる。 さらに、ジュスリンによると、音楽が表す感情と同じ感情が引き起こされるかどうかは、関与するメカニズムに依存する。したがって、音楽が表す感情(音楽から感じ取った曲想)と音楽によって引き起こされた感情が常に同じになると仮定してはならない。そのことを踏まえると、知覚したことと感受したこととの関わりを考える際に、“感じたこと”“感受したこと”などのまとめ方で感受したことと「喚起された感情」を混同するのではなく、理論上は分けて考える必要がある。しかし、授業でそれを行うのは、現実的でない部分も多い。そのため、“感じたこと”“感受したこと”のなかには知覚したことと結び付かないこともあることを教師が理解し、やみくもに関連付けたり、関連付けること自体が目的化したりしないように留意していくという姿勢が必要である。 授業は動的なものであり、それゆえに学習過程で生じる感情も動的で多様である。多様だからこそ、鑑賞の授業では、生徒と音楽との関わりに根差して、音楽によって引き起こされる一つ一つの感情の内実を捉えようとする視点が重要である。}, pages = {169--184}, title = {音楽によって喚起される感情の諸相 : P. N. ジュスリンの「BRECVEMAモデル」の検討を通して}, volume = {32}, year = {2020}, yomi = {ツルオカ, ショウタ} }