@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002202, author = {今野, 哲也 and Konno, Tetsuya}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {フォーレの《5つのヴェネツィアの歌》Op.58(1891)第4曲《クリメーヌに》は、ヴェルレーヌの『雅なる宴』(1869)第16編に基づく歌曲である。ここではフォーレ特有の和声語法が存分に展開されており、原詩と「和声構造」(調の配列に基づく楽曲全体の構成方法)が理知的に結び付けられるという点で、歌曲集の他の4曲とも同様と言える。そのため、この作品を読み解く鍵は、和声構造の構築手法が重要と考える。本研究の目的は、歌詞や和声技法の考察を通じて、《クリメーヌに》の和声構造の構築手法を詳らかにすることにある。 フォーレらしさを象徴する和声技法に、調性の中に(教会)旋法の色彩を落とし込む「旋法的調性」がある。それはとくに、《クリメーヌに》の冒頭部分に顕著である。この部分はe-moll優位ではあるが、[cis]音を強調することで、e-dorianやh-mollなどの多義的解釈を許容し、かつ異国趣味を醸し出す要因にもなっている。また「フォーレ終止」は、《レクイエム》Op.48前後に好んで使われた語法だが、《クリメーヌに》の各部分でも用いられ、この歌曲の特徴にもなっている。「フォーレ終止」は、短調の「ドリアのIV」(+IV、+IV7、+IV9諸和音の第2転回形)から、Vの和音(基本形)へと進む、いわば変終止のヴァリアンテとも言える和声動向である。さらには、これまで理論化されてこなかったであろう、「減7の和音≒付加46の和音(第5音省略)」の異名同音的転義の図式も《クリメーヌに》から導き出すに至った。 本稿は《クリメーヌに》の和声構造を、【A1】(第1節の歌詞)→【A2】(第1節)→【A3】(第1節)→【B】(第2節)→【A4】(第2・3節)→【C】(第4節)→【A5】(第5節)→【A6】(第5節)→【D】(第5節)の9部構成と分析する。【A〇】の現れ方は「ロンド」を彷彿させられるものがあり、その意味でこの歌曲には、器楽的な発想も見て取れる。それでいて詩の内容は、深読みにも堪え得る抽象的な内容となっている。詩は5節の構造だが、それが上記の9区分の音楽に落とし込まれるため、当然、音楽と歌詞の区切りには「ずれ」が生じる。その和声構造の構築においては、歌と器楽的な発想を協奏させる形で、ときに逆説的なレトリックを織り込みながら、フォーレは独自の表現を展開したと考える。その結果《クリメーヌに》は、(1)音楽区分は明確で、(2)詩節も明確だが、(3)両者は不整合の傾向にある。そして、(4)詩の内容は象徴的・叙情的で、(5)それが異国情緒を醸し出すなどの特徴を孕む歌曲として結実した。このように多様な属性を有する歌曲においては、禁欲的な和声技法など必要あるまい。伝統と革新を巧妙に使い分ける、フォーレの柔軟な和声技法と不可分に結び付いてこそ、《クリメーヌに》のような和声構造が成り立ち得るという見解を以て、本稿の結論とする。}, pages = {19--35}, title = {G.フォーレの歌曲創作における和声構造の構築手法2 : 《クリメーヌに》作品58-4を対象として}, volume = {32}, year = {2020}, yomi = {コンノ, テツヤ} }