@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002201, author = {加藤, 一郎 and Kato, Ichiro}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {フレデリック・ショパンの音楽は彼自身の演奏様式と深く結びついていたために、ショパンの音楽を理解するためには彼自身の演奏様式を知る必要がある。しかし、現在のショパンに関する研究は、演奏論的な取り組みが進んでいるとは言えない。そこで、本研究ではショパンの最も優れた生徒の一人であったカミーユ・デュボワ=オメアラ Camille Dubois (née O’Meara)(1828~1907年)がショパンのレッスンの際に用いていた彼の作品による楽譜に着目し、そこに残された書き込みを分析することによって、彼の音楽様式を明らかにしようとしたものである。この楽譜は現在フランス国立図書館に所蔵されており(Rés. F. 980)、当館の電子図書館を通して調査したところ、書き込みは大きく次の3点に分類された。 A 誤植の訂正 B 音楽構造の修正及び加筆 C 演奏に関する指示 Aの大半は臨時記号やタイの脱落によるものであり、それらは出版社、ショパン自身、コピーストの何れかの原因で起こったものであった。ショパンが《ワルツ》嬰ハ短調作品64—2に補筆したタイは対位法理論やベルカントとの関連を示していた。 Bはa曲の短縮及び拡大、b対旋律の付与、c変奏及び装飾の付与からなっていた。aには曲の冗長さを避けたものや、曲を本来の3部分形式に改めるものが含まれていた。Bは《ワルツ》作品34-2に書き込まれた対旋律が音楽的示唆に富んでいた。cは装飾的変奏に基づくものが多く、ショパンの即興的アイデアの豊かさを示していた。 Cにはaテンポ及び曲の性格に関する指示、bフレージング及びアーティキュレーション、アゴーギクに関する指示、c強弱法、d装飾音の奏法、e運指法、fペダリング、g演奏に関する様々な指示が含まれていた。aはコピーストのミスやショパンによる指示の削除が見られた。ショパンはbを縦の線やスラーで行っていたが、それは、しばしばショパンが製版用自筆譜に書いたスラーより、より演奏実践の詳細を垣間見せてくれるものであった。cは作品の構造を明瞭にし、演奏解釈を起伏に富むものにしていた。dは和音の上声部に前打音が付けられた場合を除いて、装飾音をバスと同時に弾き始める奏法が一貫して指示されており、これはバロックの演奏習慣と極めて近いものであった。eにはショパン独自の運指法が示されており、4の性格が活かされているものが多かった。fは低音部のパッセージにデモーニッシュな効果を与えるものが見られた。gにはバスに1オクターヴ低い音を重複させたり、旋律を1オクターヴ高く移行させる方法、線による指示が見られた。 ショパンの書き込みの多くは即興的思考に基づくものであり、ベルカントとの関連が強く見られ、その源流となるバロックの表現様式を示すものも含まれていた。こうした基礎研究が今後のショパン理解に、そして、ショパン演奏に役立つことができれば幸いである。}, pages = {1--17}, title = {カミーユ・デュボワ=オメアラの楽譜の書き込みに関する序論的研究 : フランス国立図書館所蔵資料のアーカイヴ調査による}, volume = {32}, year = {2020}, yomi = {カトウ, イチロウ} }