@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002135, author = {金田, 望 and Kaneda, Nozomu}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {本研究は武満徹(Toru Takemitsu, 1930~96)の創作において空間性へのアプローチがどのように⾏われてきたかについて分析と考察を⾏い、これまでの武満研究にて導き出された成果とは異なる視点での武満の⾳楽の価値を⾒出すと共に、武満独⾃の⽅法論、そして初期から後期までどのようにアプローチが変化したのかを解明する事を⽬標とする。 今⽇に⾄る武満研究の⼤半は「様式の変化」あるいは「和声を中⼼とした⾳組織」に関するものであり、楢崎洋⼦著『武満徹と三善晃の作曲様式−無調性と⾳群作法を巡って−』(1994)やピーター・バート著『武満徹の⾳楽』(2006)などにより、有益な蓄積がなされている。⼀⽅で、同様に重要だと思われる「空間性」に関する先⾏研究は充分になされているとは⾔い難い。「空間性」を主題とした先⾏研究ではHarley, Maria A. 2011. Space and Spatialization in Contemporary Music: History and Analysis, Ideas and Implementations やSolomont, Jason W. 2007. SPATIALIZATION IN MUSIC: THE ANALYSIS AND INTERPRETATION OF SPATIAL GESTURES などが挙げられる。これらは「空間性」についての重要な研究成果であるが、武満については作品の紹介に留まっているため、武満の空間性に関する⽅法論を体系化した研究は存在していないと⾔えるだろう。そのような現状に対する問題意識が本研究の出発点となっている。 本論は5つの章から成る。第1章では⻄洋⾳楽史における空間性へのアプローチの歴史を俯瞰し、続く第2章では武満独⾃の空間性のキーワードである「距離」、「庭」のメタファーについて具体的な作品例を挙げながら考察を⾏う。第3章では空間的アプローチが⾒られるオーケストラ作品の作品年表を提⽰し、各時代の特徴を補⾜しながら1958~79 年を第1期、1980 年以降を第2期、さらに1972~79 年を変遷期というように時代区分を⾏なった。第4章では《地平線のドーリア》(1966)、《夢窓》(1985)、《群島S.》(1993)を筆者が提唱した具体的な楽器配置により得られる「物理的空間性」、オーケストレーションや楽器法により得られる「想像的空間性」の2つの⾯からそれぞれの楽曲に対して分析を⾏なった。 《地平線のドーリア》においては、弦楽器群を2分割し、舞台上にて前後配置したことにより前から後ろへの⾳像移動や短いアタック⾳(近景)と持続⾳(遠景)などの性質に差をもつ⾳同⼠の対⽐による遠近表現が作品の核となっていた。想像的空間性によるアプローチでは、強度により作り出す「遠近」という⽔平的な空間に加え、⾳域により作り出す「⾼低」という垂直的な空間も存在していると考えられる。《夢窓》では、前後配置に加え、左右に弦楽器が分割され、さらにその中⼼にもアンサンブルが配置され「内外」という配置にまで拡⼤が⾏われた。《群島S.》では、会場全体を包むように空間配置された5つのグループによる様々な⽅向から聞こえてくる⾳同⼠の呼び交わしが⾏われる。呼び交わされる⾳は明確な旋律であり、この旋律によりエコー効果をより効果的に扱っている。 以上の分析を通し、初期から後期に向かって舞台上から会場全体へ楽器配置を拡⼤することにより、会場を様々な⽅向から⾳が聞こえてくる⾳の庭と⾒⽴てる⽅法へ変化し、オーケストレーションは《弧》(1963-76)の時に⽤いられた作庭法の援⽤や庭の中に存在するマテリアルそれぞれが持つ時間周期を応⽤する概念的な⽅法から、武満⾃⾝が⾃然の中で経験した⾳体験をオーケストレーションするといった想像的な⽅法に変化していると結論づけた。}, pages = {159--175}, title = {武満徹のオーケストラ作品における空間配置の主題化について : 変遷と概観と3つの分析}, volume = {31}, year = {2019}, yomi = {カネダ, ノゾム} }