@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00002132, author = {悪原, 至 and Akuhara, Itaru}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu : Journal of Graduate School, Kunitachi College of Music}, month = {Mar}, note = {《Persephassa》はヤニス・クセナキスが1969年に作曲した打楽器6重奏曲である。《Persephassa》は聴衆の周りに6人の打楽器奏者が正六角形を描くように配置され、それが大きな特徴の一つとなっている。聴衆の周りを音が移動していくかのような効果が施されており、その音響効果が《Persephassa》の大きな魅力の一つでもある。その音の動きは、規則的に回り続けるところもあれば、ランダムに動いているかのように思われるところもある。クセナキスは数学の知識を用いて音の雲のような音型や、グリッサンドの集積による音の曲面など、あらゆる音の集合体を作り上げてきた。そこで、一見するとランダムにも見える音の空間移動にも何らかのクセナキスの意図が働いているのではないかと思い、その移動の様相を解析してみた。分析した結果、音の動きに数学の群論の分野である二面体群の概念が用いられていることを明らかにできた。 二面体群は、正多角形に回転移動・対称移動を施すことで表される群の構造であり、《Persephassa》においてはその配置の形と同じく正六角形が用いられている。《Persephassa》では62小節から145小節にかけて、異なるリズム周期をもった6つの音が各奏者間で受け渡され、あたかも音が空間上を動いているような感覚を聴衆にもたらすが、その終わりの方の132小節からは音の動きが不規則であるように見える。しかし二面体群の構造を理解したうえで音の動きを確認すると、そこにはいくつもの規則性が確認でき、規則性を用いながら不規則な形を作り上げていることが分かる。例えば、正六角形は60°、120°、180°、240°、300°時計周りに回転させることで、もとの形と空間上に同じ形を空間内に保つように置き換えることができ、それぞれの回転に伴い音が移動すると考えると、それらの操作が一定のサイクルに従って用いられていることが分かった。さらに、その操作から導き出された音の配置を順に見てみると、そこにも一定の規則性(シンメトリー)が織り込まれていた。 132小節からの音の移動は、一見するとランダムに音が飛び交っているようで、規則性をほとんど感じ得ない。しかし、実際には正六角形の操作により音の移動の軌跡が生み出され、その加える操作を起こす順番にも規則性(シンメトリー)を含ませている。クセナキスがあられや雨粒が何か硬い表面に当たるといった自然現象、あるいは真夏の野外に響くセミの声のような音響出来事を推計学のアプローチを使い音楽に取り込もうとしたことは有名な話である。クセナキスによると、ヨーロッパの音楽の歴史は、実はこの世を理(ロゴス)によって説明しようとする人間の試みの歴史に呼応している。《Persephassa》においては、群論を用いることによりランダムに音が動いているかのような効果を人為的に作り出している。これはクセナキスのヨーロッパの音楽に対する考え方に符合し、群論を用いて自然現象(ランダム)を作り出そうという試みであるといえる。}, pages = {103--122}, title = {ヤニス・クセナキス《Persephassa》の分析 : 音の空間移動と二面体群}, volume = {31}, year = {2019}, yomi = {アクハラ, イタル} }