@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00001977, author = {今野, 哲也 and Konno, Tetsuya}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu}, month = {Mar}, note = {本研究は、《詩人の恋Dichterliebe》Op.48(1840)の第12曲〈あかるい夏の朝にAm leuchtenden Sommermorgen〉を対象に、R.シューマン(Robert Schumann 1810-56)の「属7の和音」の多義的な用法を検証し、それが意味するものを読み解くことを目的とする。なお本稿では、和声機能を一旦度外視し、[4+3+3+2]の構造(半音を1として時計回り)に還元し得る音響体を、「属7の和音」と理解する。 T.1の和音は、一聴したところH-dur/mollのV7(E-dur/mollのVv7)とも捉え得るが、その後の和声動向に鑑みると、B-durの「ドイツの6」(o-Vv9-5)と分析される(ただしシューマンの記譜は[ges-b-cis-e])。またT.8の転調でも、T.1と同じ音度の「属7の和音」が媒介となるが、この部分は、b-mollの-Vv9-5から、E-durのVv7への異名同音的転義と解釈できる。また、T.10におけるE-durのo-Vv9-5から、B-durへのVv7の異名同音的転義では、T.8から見て、ちょうど3全音関係の「属7の和音」が媒介となる。このT.8(≒T.1)と、T.10の「属7の和音」の間の3全音という音程の開きは、「属7の和音」と「ドイツの6」という形体上の違いとなって表れるが、その実、どちらもB-dur/mollのo-Vv9-5かVv7(またはE-dur/mollのo-Vv9-5かVv7)という同じ機能へと還元され得る。そのため、もし両者を同じ調の中で使用したとしても、和声の流れに何ら支障は生じない。なおT.16-19には、B-durのViv7+5から、G-durのV-5,+5という、「全音音階」を彷彿させられる形体(「属7の和音」の変容とも)を媒介とする転義が見出される。 本稿の考察から、一聴(一見)したところ、非機能的で曖昧な印象を与える和声技法とは裏腹に、否、幽玄な雰囲気を醸し出そうとするほど、高度に洗練された和声技法が不可欠となったと考え得る。ここで要点となるものが、(1)異名同音的転義、(2)3全音、(3)上方・下方変位第5音(突き詰めれば「全音音階」への指向性)の視点である。その意味において、シューマンが展開した「属7の和音」の技法は、感覚だけに依拠するものでは決してなく、厳格で、高度に知的な和声的技法に基づくことなしには成しえない表現であると、本研究は結論付けるものである。ロマン派の時代までには、V7(Vv7)と「ドイツの6」との異名同音的読み替えが常套手段と化していたことは、多くの実例が示すところである。しかし〈夏の朝〉に見られるシューマンの「属7の和音」の技法は稀有なものと言え、こうしたシューマン独自の「属7の和音」技法を明らかにせんとする本研究は、従来の記述には見られないもので、意義を持つと考える。}, pages = {35--51}, title = {〈明るい夏の朝に〉作品48-12における多義的和声の考察 : R.シューマンの「属7の和音」の技法とその応用}, volume = {30}, year = {2018}, yomi = {コンノ, テツヤ} }