@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00001975, author = {加藤, 一郎 and 富田, 庸 and Kato, Ichiro}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu}, month = {Mar}, note = {F. F. ショパン(1810~1849年)の対位法については、既に多くの研究が行われてきた。しかし、ショパンの模倣対位法、取り分けカノンの技法については、彼の後期様式との関連が指摘されているにも拘わらず、充分な研究が行われてこなかった。従って、本研究ではショパンのカノン及びカノン風パッセージに焦点を絞り、その技法的発展と半音階主義、そして彼の後期様式の美学との関連について考察した。 ショパンは模倣対位法を、《フーガ》イ短調を除き、全てカノン或いは自由なカノン風パッセージを曲の中に挿入する方法で用いていた。それらは彼の学習期の作品と、特に1841年以降の後期様式の作品に多く残されている。ワルシャワ王立大学付属中央音楽学校におけるJ. エルスネルの指導の下、彼の学習期の作品には、模倣対位法とラメントバスの重複が用いられており、これはショパンのこの時代の模倣対位法の大きな特徴と言える。しかし、彼は1829年に音楽学校を卒業後、暫く模倣対位法を用いなくなった。 ショパンは1839年に《24の前奏曲》作品28を完成させる際、バッハ《平均律クラヴィーア曲集》を深く研究し、この頃から再び模倣対位法に興味を持つようになったと考えられる。《カノン》ヘ短調の草稿や、簡潔なカノンが挿入された《バラード》ヘ長調作品38はこの時期に書かれたものである。 ショパンが後期の作品に挿入したカノンは技法的な発展を示すと共に、半音階的技法が様々な方法で用いられている。《マズルカ》嬰ハ短調作品50-3(1841-42)には2声の簡潔なカノンが2回挿入されているが、その際、音階の4度音が半音上げられ、カノンとポーランド民族音楽との融合が図られている。また、《バラード》第4番ヘ短調作品52(1842)にはカノンが3回挿入されており、その第3カノンには半音階下行進行が埋め込まれている。これは彼が学習期に用いた方法であるが、この《バラード》のカノンは3声で書かれている。《マズルカ》ハ短調作品56-3(1843)には減7の和音の半音階的下行進行の枠組みの中にモティーフが3回挿入されている。その際、減7の和声進行はしばしば係留が行われており、それはワーグナーの和声法を予見している。更に、《ピアノとチェロのためのソナタ》ト短調作品65(1846-47)の第4楽章には前述した《カノン》ヘ短調が3回挿入されており、彼はその第3カノンで異名同音的転調、半音階的転調を行っている。 ショパンが後期様式の中で書いたカノン及びカノン風パッセージは半音階的技法に満ち、異名同音的転調、半音階的転調、そして増4度的転調が独自の方法で用いられていた。それらは18世紀以前の対位法に19世紀中葉のアイデアを組み合わせたものであり、それはブロナルスキが「第3の様式」(Bronarski: 238)と呼んだ、彼の後期様式を示すものである。ショパンの入念な音の選択や豊富な半音階的技法、音楽に対する深い考察が模倣対位法を用いていない箇所にさえ以前にも増して行われるようになり、これは彼が後期様式において、全く新しい様式を打ち立てたことを示している。 尚、本研究はJSPS科研費 JP26370106の助成を受けたものです。}, pages = {1--15}, title = {ショパンのカノン : 技法的発展、半音階主義、そして後期様式の美学との関連}, volume = {30}, year = {2018}, yomi = {カトウ, イチロウ and トミタ, ヨウ} }