@article{oai:kunion.repo.nii.ac.jp:00001897, author = {稲生, 涼子 and 加藤, 萌 and 鶴岡, 翔太 and 杜, 鎭姫 and 神原, 雅之 and Ino, Ryoko and Kato, Moe and Tsuruoka, Shota and Du, Jinhee and Kambara, Masayuki}, journal = {音楽研究 : 大学院研究年報, Ongaku Kenkyu}, month = {Mar}, note = {本稿は,ジャン=ジャック・ルソー著『言語起源論』の解題を行い,音楽教育に関する示唆を得ることを目的としている。ルソーは,この著作の中で,音楽を特徴づけている旋律や和声の成立について自論を展開し,音楽の根源性について言及している。この中には音楽的能力の成長・発達の道筋を描くなど,現代の音楽教育を考えるときの示唆を含んでいる。本稿では,著作の中のエポックを取りだし,その主意を解読し,音楽教育の観点から考察を加えた。 1)言語と歌唱の誕生:ルソーは,最初の言語は歌であったという。彼は,他者とのコミュニケーションにおける身振りと声に着目した。ルソーは,「身体的欲求が最初の身振りを示唆し,情念(精神的欲求)が最初の声を引き出したのだ」(ルソー 2007:21 )と述べ,音楽の根底に横たわっている欲求の存在に着目している。乳幼児の発語と歌い始める時期はほぼ重なり合うと見做される。それゆえに,乳児が言葉を唱える姿はあたかも歌っているように,周囲の大人には音楽的な表現として映る。 2)文字表記と音声言語:音声表記と文字表記の成り立ちをみてみると,それは音楽と言語の関係に照応して読み取られる。口伝において方言が在るように,語句は発音や抑揚によって意味合いが異なる。抑揚の違いは文字表記では表せない。同様のことが音楽で生じる。楽譜上に音色を記すことは(文字で示されたとしても)難しい。これは楽譜の解釈によって演奏が変わることでも明らかである。この延長線上には,音楽的な韻律法の成立へつながっている。音楽教育の観点でいえば,表記されたもの(楽譜など)から始めるのではなく,音や響きから教育をスタートすることが自然である。 3)情念を結ぶ旋律:情念に直結した純粋な声を形づくっているのはリズムと音色であり,それらの要素が情念を表し得るとルソーは考えた。そして,旋律を形づくるのもまたそれらの要素である。それゆえに,ルソーは,旋律を情念の連続を音楽的に模した「情念の音声的な記号」と捉えた。ルソーは,旋律の重要性と説くことによって,音楽の原点(情念)を尊重した。 4)人間回復の要求:ルソーは音楽の歴史的な堕落を,言語との関連で指摘した。言語は文字・文法が体系化されるにつれて本来の魅力を失っていった。一方で,旋律は人間の情念から生まれ,情念を伝達するものだったが,和声の発展によってやはり旋律本来の魅力を失うこととなった。音楽の堕落の過程は,言語における文字や文法の完成と平行している(ルソー2007:145)。ゆえに,音楽が心に働きかけ感動を与えるには,音楽を原初の形に近づける(旋律に語らせる)ことが重要である。 5)感性の重要性:ルソーは,著書『エミール』において,子ども自身の感性を出発点とすることの重要性を説いている。身の丈にあったものが最も感性に働きかけ,価値を生むと考えた。 『言語起源論』には,音楽教育の基本的な考え方を読み取ることができる。①初期学習の過程で,文字の文化よりも耳の文化を優先させること。それは誰もが辿る発達的道筋に従うということである。②双方向で協働的な学習関係を維持するためには,感性を基礎とすることが肝要である。ここでみられたルソーの指摘は,初期の学習段階で知識や技術の獲得を優先しようとする大人の態度への警鐘と受け止めることができる。意欲や気付きの蓄積に一層の価値を置くことが重要である。}, pages = {107--114}, title = {J.J.ルソーの音楽教育観に関する一研究 : 『言語起源論』の解題を中心に}, volume = {29}, year = {2017}, yomi = {イノウ, リョウコ and カトウ, モエ and ツルオカ, ショウタ and カンバラ, マサユキ} }